トムラウシ山の遭難事故に思うこと。

 今回のトムラウシ山の遭難事故について、あまり他人事ではないなあ(といっても私は数泊予定の縦走なんておよそ計画しないとは思いますが)と思い、ちょこちょこ記事などを追っていたところ、以下のようなページを見つけました。

 「いのち」と「おカネ」 -大雪Journal-
 http://homepage.mac.com/hirosis/watching/watch031022.html

 

 山頂から、黒岳石室・雲の平と進むにつれて風はさらに強まり、お鉢平展望台に着いたときには秒速15〜20メートルちかい強風になっていた。これ以上登山を続けるのは危険と判断し、縦走を中止して層雲峡にもどる旨を参加者に伝えたところ、大部分の参加者は納得したが、一部には登山中止に強硬に反対する参加者がいた。もしこのまま登山を続けたいのなら、グループから離脱し、「今後なにがあっても旅行会社とガイドにはいっさい損害賠償の請求をしない」と一筆書いてから行くようにと言ったところ、渋々、登山中止を受け入れた。

 後日、この参加者が旅行から帰った後でツアーの主催会社に送った手紙のコピーを、旅行会社経緯で見せられ、暗澹とした気分になった。最初から縦走などする気もなく、途中で仕事を止めて早く帰り、ガイド料だけふんだくる雲助ガイドに当たって気分を害した、などという内容が連綿と綴られていたからだ。

 胸に迫りました。これじゃあ、ガイドは中止の判断ができない。

 こちらの記事は2002年に起きた同じトムラウシ山での大量遭難事故後に書かれている記事ですが、「悪天候の中出発したこと」「ツアー登山だったこと」など、時系列的にも非常に今回のケースと似ています。現在行われている、アミューズ(ツアー企画会社)に対する家宅捜索についても、「ツアーガイドにどの程度の権限があったのか」が捜査対象となっているようですが、2002年の事故以来、旅行業界はツアー登山に対してどんな施策をとっていたのでしょうか。

 事故後に、「ガイドの判断に誤りがあった」「ツアー参加者の装備が不十分だった」ということは至極簡単ではありますが、たとえば自分がそんなツアーに参加していたときに「荒天だから私はここに止まってもう1泊します」と言えるかどうかと言われると、非常に疑問ですし、またガイドの立場で「ここに止まりもう1泊します。予備日はありませんので航空券は紙切れになりますすいません」って言えるかどうかと言われると、かなり難しいかなとも思います。

 また、いろいろな証言を見ていると「テントやツェルト、予備の防寒具を、いらないから帰りの宿舎に送るように言われた」という話も出ています。今回のツアーはポーター付きの楽々縦走登山が売りでしたけれど、行程を見る限り私でも怖じ気づくようなコースとペースでしたし、参加者のほとんどが60代というところを見ても、やはり募集自体にかなり無理があったのではないかなあと感じています。

・冬山装備の万全な荷を背負えば、もしかしたら途中でばてて動けなくなるかもしれない→遭難
・夏山装備の軽装で行けば、荒天の場合に寒さで動けなくなるかもしれない→遭難

 ガイドにとっては、痛し痒し。しかも今回のガイドは自らの登山経験はあるとはいえ、二人は未踏ルートでしかもバイト。ガイド資格もなかったそうです。完全に、荷運びのポーターとして雇われていたのでしょう。一番ガイドの経験があった方は、脱落した方を見捨てておけずに付き添い死。山中でダメかもしれないと悟った人達の絶望とつらさは想像を絶します。寒く辛く耐え難い思いで下山された方が「他の方を残してきて薄情だった」と自分を責めていましたが、もうこれは致し方ないことで、他の選択肢をとればご自分も命を落とされていたでしょう。

 中高年に今とても人気の登山、特に百名山めぐりは、自らの経験や年齢をツアーで完全に補えると勘違いしている方が非常に多いそうです。ですが、これは募集する方にも責任があるんじゃないかと思います。もちろん参加者がいなければツアーとして成り立たないのでどうしてもそういう書き方になってしまうのでしょうが、「技術」「体力」などの★を甘くつけたり、持ち物について楽観的に書いたり、きちんと事前のチェックを行わなかったりすることは、やっぱり問題なのではないでしょうか。マスコミ各社は裁判の関係もありますし、またマスコミ各社の関連会社が登山ツアーを行っていたりする関係もあるので、今はあまりツアー会社のことには触れていませんが、いくらはやっていて参加者が確保できる商品であったとしても安易に売りつけるのは消費者に対しての責任が欠けているのではないかなあと感じています。

 ところで、2008年に発足した観光庁は、今回の件を鑑みて何か旅行業法の見直しなどは行うでしょうか。2002年の痛い教訓をまったく生かし切れてない、というところで、なんらか罰則や法整備などが必要な時期だと思うのですが。

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トムラウシ山の遭難事故に思うこと。」への4件のフィードバック

  1. 旦那も『なんでこんな大事故になったんだろうな?』と呟いておりました。
    人災と天災が8:2くらいかしら。
    判断ミスはあったと思いますが、それからの会社の対応にも不誠実なところがありますし…。
    またひとつ私は山が怖くなりました(´・ω・)

  2. 今回の遭難事故は、起こるべくして起こってしまったと、そんな感じですね。
    遭難ってのは、大体そういうものなのかもしれませんが。
    原因は会社・ガイド・ツアー客全員にあると思います。
    個人的に登山はしないんですけど、
    ヒマラヤなどへ遠征登山の経験を持つ方から話を聞いたことがあります。
    常に余裕を持って行動しないと、山は駄目なんだと。
    ほんの少しの油断が命取りに。
    「いけそう」と思うのは「山の張った罠」だそうです。
    お金を払ってるんだから、その分楽しみたいという気持ちは分かりますが、
    厳しい自然環境を相手にしているんだという意識を、常に持っていないといけませんね……。

  3. どんな小さな山にも必ず「神」と「魔」が潜んでいるからぬぅ。
    ちなみに今のオイラの体重は『山に登ってた頃の体重+冬山装備』にほぼ等しい。
    はうーん

  4. >Pomponちゃん
    いろんなところでいろんなしがらみがあって、それが全部重なって…って感じですかね。
    スキーでもダイビングでもおおよそ自然を相手にしたスポーツや遊びには、
    どうしても危険がつきものなのに、山登りは手軽に誰でもできるが故に甘く見ている人が
    本当に多いのではないかなと感じています。
    富士山にもTシャツ短パンで100均のビニールポンチョだけで来る、
    「あんた死にたいの?」て人が引きも切らないようですし。
    安全に楽しく遊びたいですね〜。せっかく遊びに行くんだから。
    >Redinaさん
    会社が「これまでは事故が起きなかった」って言ってましたが、それはたまたま
    幸運が重なって好天に恵まれたおかげで起きなかっただけであって、
    あの体制だといつか必ずこういう事故が起きていたはずですよね。
    みんなにそれぞれ責任があって、死んじゃった時点で失敗だったんだと思います。
    いけそう、と思うのが山の張った罠、というのはとても良く分かります。
    海だってそうですものね。台風だけど行けそうだからサーフィンやって、
    そのまま死んじゃった人、毎年出ますしね。
    私は登る人ですが、降水確率が50%以上であればどんなに楽しみにしていても
    延期にします。自分の実力を過信できませんし、展望が開けない山登りは
    無理していっても楽しくないです。やっぱり。
    >tonoさま
    頂上に立った瞬間に「うわ、神様にやられた。こんなご褒美聞いてねえ」みたいな
    時もありますし、その後に予報にも出てなかった悪天に巻き込まれたこともあります。
    いずれにせよ自分じゃどうにもならない、どうにもできない事ですよね。
    そして私も、高校の頃に比べると+冬山装備です。。。痩せなきゃ…。。。

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